「アニメ化してほしい漫画はなんですか?」こんなアンケートが回ってくるたび、私は「BASARA」「7SEEDS」と田村由美作品を推してきた。
田村由美。漫画好きなら知ってるだろう。少女漫画好きな人なら。それ以外の人は意外と知らない。大ベテランの大漫画家だけど、一般認知は少なめ。絵に癖があることと、たぶんヒットアニメがないから。
でも、田村由美ほどアニメ向きの漫画作品ってあるだろうか。壮大で、ドラマチックで、カラフル。劇的な言い回しが多くてさぞかしアニメにしたら映えるだろうなあ。脳内でアニメ再生してしまう。
今の映像技術でアニメ化したら、それは素晴らしいものができるだろうとアニメ化を夢見てきた。BASARAの戦争シーンや7SEEDSの未知の動物からの脱出場面。どんなに臨場感あふれるシーンになるだろう。
そんな折に舞い込んだ、7SEEDSのアニメ化情報。
「やっとか!」
やっときた。動くのだ!あの絶望感、高揚感!登場人物たちの決意と悲哀。この感動を、より多くの人と分かち合えるのだ!!
ありがとうNETFLIX!!
さて、ここまで読んで、田村由美の作品に興味を持った人は、ぜひ、先に漫画を読んでほしい。
絶対に先に漫画を読んでほしい。
ゆめゆめ、いや絶対、アニメを先に見るなんてマネはやめてほしい。
お願いやめてぇえーーーーーー!!!
これ以下のレビューも、ぜーったいぜぇーったい漫画を読んでから読んでお願い世界のどこかで私が土下座するから!
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アニメは大爆死だった。
Contents
ここからあらすじを追いながらレビューするよ。
ファンはハンカチの準備を。悔し涙を拭くのに使います。
彼女はあっさり生きていた。
まず絵柄。予告を見た時点で「あッ」感はある。
黒の線ではなく、淡めの色で描いているのは昨今仕様なのだろうか。そこは別にいいとして、絵は田村由美の成分を隠し味程度に入れてうすーくうすーく水で伸ばしたような、ほとんど特徴のないものとなっている。
そこそこかっこいいOP。そして目覚めると、花は揺れる船の中にいた。
牡丹に連れられて甲板に出ると、そこは、臨場感がまったくない嵐だった。
斜めに動く線と髪の動きでなんとなく表現される嵐。「ふーん」という声が思わず漏れる、あまりに迫力に欠ける演出。白黒の静止画だった漫画でも、「なんだここは、何が起きてるんだ、何が始まるんだ?」という高揚した混乱を覚えたのに、いったいどうしたってんだよ。
その大したことない嵐が過ぎると、あっさりと陸が見つかり、一行は軽く自己紹介し、今夜のおかずを気にする程度には「ここはどこだろう、寝る前は家にいたのに」と不思議がる。
彼らはモズにも会い、割とすぐに食料を手に入れる。そして…牡丹から自分たちが人類の存続のため冷凍保存されていたこと。すでに人類はおそらく滅びていることを聞く。「もう花と会えないなんて!」
嫌だ!
トテトテと駆け出す嵐。つい漏れる笑い。あれ走ってるんか?動いてる感少ないけど。
っていうか笑ったよ、自分。このアニメは私の心を醜くする。
っていうか花他春のチームが出てくるのだ!第1話に入ってすぐに!
ぇえ~・・・・
「もう花とは会えないのか」
「え!?花は生きてるのか!?」
「え、でも花と同じ時代なのか!?」
「出会えるのか?そしてその時お互いまだ好きなのか!?」
という、漫画読者を翻弄したミステリー部分をバッサリと切り捨てた潔い構成!!
実質ヒロインの花が最初に出てこない変則構成はやりにくかったのかな。仕方ない…のかな。
花たちは出てきた時からアッサリと普通に生活し、夏Bチームのサバイバル感をいきなり亡き者にする。
これを見て改めて、優秀な他のチームを最初に登場させず、夏Bチームの苦労を先に展開して徐々にサバイバルの難易度をあげ、読者を飽きさせない原作の構成って神だよなあ・・・。
そんな時彼らが見たもの。それは巨大カマキリ風動物の巣。
ここで演出は、赤い目と白い体の線をパターン風に配置して、密集感を出した、明らかに横に長い1枚絵を横にスライドさせながら映しただけという、ものすごい手抜き技を披露する。
サバイバルものというよりは、哲学系のナニカを見ているような気になってくる。
「あー」って感じで。
見ているこっちも「ふーん」って感じになる。
「仕方ないよ」
ほとんど気にすることもなく去る一行。
今仕方ないって言ったのハル?ハルか?その普通の薄味の顔した何の特徴もないその青年ハル?顔覚えられそうもないんだけど!
その時私はセブンのレモンケーキを食べるために離席した。
もはやレモンケーキのほうが気になってきた
セブンのレモンケーキはかなりおいしい。チョコレートも濃厚でおいしかったけれど、時々濃すぎて、コーヒーとちびちび食べていたものだったが、レモンはすっきり爽やか、ガツガツ行ける。
食べ終わったころ、花たちは柳の言葉に従って7富士を探すため船出していた。
ちまき・まつりと合流したナツたち。7富士の1つを見つけて拠点ができると、どうしても花をあきらめきれない嵐、そして嵐を好きになったナツ、1つのところにじっとしていられないという蝉丸の3人は関東を目指す。そしてパッと草を分けて進んだらそこになんだか秋チームがいた。
「もう誰も生きていないのではないか?」
「こんな広大なところで一体どうやって出会えばいいんだ?」
「ま、まさか人が!?」
またしても、漫画で読者が感じた不安・驚き・感動をバッサリ切り捨てた潔い演出!そこにはトウモロコシ畑があり、ナツたちはつかまり、そしてあっさり逃げ出す。
次にあっさり荒巻と遭遇し、その荒巻はあっさり春のチームと遭遇する。
彼女はなんか死んでいた
美鶴と鷹弘を守るため、ナイフ一本でトラに向かっていく吹雪!「吹雪―――――!!!!!」「ガオ。モグモグモグモグモグモグ。」
ああーーーーーーーーーー!吹雪があっさり、もうメッチャメチャあっさりとモグモグされてるよーーーー!
逃げてーー!美鶴!鷹弘!なんでそんな至近距離で眺めてるのーーーー!
トコトコと洞窟にたどり着いた2人。鷹弘はなんか・・・・・・寝る。美鶴はなんか・・・・踊る。
踊りは放送前に予算がカットされてしまったのでしょうか?紙芝居で紹介されます。いくつかポーズが静止画で流れて・・・つか、美鶴----!後----!虹-----!!
ここは漫画では、悲壮感でいっぱいの壮絶なシーンだったんだけど。
そして鷹弘は、「今夜はポークじゃなくてビーフカレーだから」って言われて「やったー」っていう人と同じくらいのテンションで「きれいだなあ」と言って寝て、起きたら、美鶴さんがなんかポーズとったまま固まっていた。
原作読んでない人には何が起きたか謎だったことでしょう。景色も全然寒そうじゃないし。そう、美鶴は凍っていた。
ねえ、このスタッフはもしかして嫌々これを作らされているの!?
安吾が見分けやすいのが幸いです
さて、どうやってだったか忘れたけど合流した春と秋チーム(え?レモンケーキもう食べていませんよ?)。
彼らは見つけたシェルターで、芸人ピートの日記を読む。そこで知った壮絶な人類の最後の日々。
花の両親の死の部分は端折られて、ピートがダニXを封じ込めたエピソードが語られ、さすがにちょっとホロっとするものが。
それにしてもこのダイジェスト感。
無理やり1シーズンに押し込めないといけなかった事情は知らぬが、だったらやらないでほしかった。
あーーーーっ!安吾が河童――――!河童だーーー!!ギャハハハハ
安吾の頭頂の白髪の描き方が雑すぎて毛の生えた皿以外の何にも見えやしない。
原作で、ちょっと安吾と嵐が見分けにくいと思っていたので、これは見分けやすくて助かる。
私はテレビを消した
この辺でNetflixは2回ほど「まだ見ていますか?」と私に問いかけて来ていた。
私は一応「見てますよ」と答えていたが、この辺で心底飽きて一回テレビを消した。
これは…このアニメは…何か行き違いがあったに違いない。
よくある話だ。それぞれは力があるのに、何かのかけ違いでいい作品ができなかった。ただそれだけの話。
デッドラインを死守するようプレッシャーをかける上層部。要求を詰め込んで毎度変更する責任者。複雑化する視聴者の要求。
スタッフたちは短い製作時間とバナナ1本しか与えられず、インスピレーションなど湧くはずのない小さな四角い部屋でこの作品に取り組んだのかもしれない。
もう1回やり直そう?
1回こういう駄々滑りしちゃうと、もうアニメ化のチャンスって当分ないんだろうなあ。
まあ、すみません。調子に乗ってディスるだけディスってしまった。アニメに詳しいわけじゃないのに。
ただ、原作漫画に思い入れが強く、アニメ化への期待と喜びが大きすぎたので、頭の中でいじって楽しまなければがっかり感を打ち消しがたかったのも事実。
私の忠告を無視して、漫画を読んでいないのにここまで読んでしまった人。めっ。
でも今からでもいいから興味があったら漫画を読んでほしい!!そしてよかったら一緒に「アニメ化してほしい漫画」に投票してください?
